この記事は、熊野寮OP. Advent Calendar 2023の1日目の記事です。
明日の記事はもんじゃさんの記事です。
この記事に現時点で参加してくれている方、これから参加してくださる方、読んでくださる方に感謝します。そして昨年度にこの企画を立ち上げてくれたモモンガ氏、昨年度および今年度寮生側企画の運営者である寺さんと、最初にこの企画を立ち上げたsk氏に敬意を表します。
何より、熊野寮事務室の雑記帳文化に愛と感謝を込めて、この文章をしたためます。
序
部屋が寒い。
今この記事を書いているのは当然11月なのだが、何故か例年以上に寒い。
なんか去年のアドカレにも、自分はとかく準備が遅い愚鈍な輩なので、結局ストーブを出さないのだと言い訳がましく書いたような気がする。今年もそうなった。
社会人になって早n年だが、幸いにして風邪を原因とした有給消化をしたことは未だない。これからも無いことを、我がことながら願う。
さて、私は仕事の都合で月に一度か二度ほどあまり面白くない文章を書いている。文筆業でもないのに、ここ数年くらいずっとそうだ。
加えて、誰に見せるでもないが小説のような何かを書いている。見せる気もないのに書いているのか、と怪訝に思われる方もおろう。だが、不思議なことに私は文章を書いているとちょっと安心するらしい。だから、興奮冷めやらぬ時や不安に駆られた夜には意味もなく文字を綴っている。
それで、私には文章を書く際に何かしら音楽を聴く癖がある。しかも、静寂の中にいた方が筆は進むのに、である。これも現代社会の病理に毒されて、何をするにも音がないと落ち着かない気がするからなのだろう、と勝手に納得している。
勿論、この文章を書いている今も音楽を聴いている。
最近のお気に入りは歌詞の無いゲームミュージックで、特にアトリエシリーズのBGMをよく作業用にしている。このシリーズはコーエーテクモのガストから発売されている錬金術をテーマとしたRPG*1の作品群で、タイトルが「〇〇のアトリエ」となっていることからその名で呼ばれる。最近だと「ライザのアトリエ」がアニメ化したことで認知している方も多いのではないかと思う(いつかまとまった休みができたら一気見したい)。
シリーズに触れたことがある方は同意下さると思うが、このシリーズはBGMがとにかく良い。本当に良い。特にライザ1と2はかなり好きだったのでサントラを買った。それ以外のシリーズ作品も、気に入った曲だけ単体で買ってみてプレイリストを作っている。
この記事の末尾に執筆に使っているプレイリストを貼っておくので、気になる人は聴いてみて欲しい。
前置きが長くなり過ぎた。アトリエの話はまた後にしよう。
やっぱり初日の文章だし、寮に関わらないことを書くのもあれかなと思ったので、一つここは寮の思い出話をしようかと思う。
寮の思い出話
寮というコミュニティの引力をどう感じるかは人それぞれだろうが、当時の私にとってはまさにブラックホール級の強さに思えた。これは寮がどうこうというより、自分がそのブロックの談話室に適応しすぎてしまったせいなのだが、とかく学部の新歓やらなんやらは殆ど行かなかった。それが良かったのか悪かったのかはついぞ分からないままだが、多分あの頃に戻れたとて同じことをするだろうなと確信している。
私にとって、寮への帰属意識とは談話室への帰属意識とほぼ同じものであった。所属していたブロックの談話室にいた人たちと気性が合ったのがとても大きかったのだろう(まあ1人だけどうしても嫌いな先輩はいたのだが。今は東京で企業の経営に干渉してお金をかすめとる仕事をしていると聞くが、彼らしいなと思う)。
寮では多くの人と出会ったし、気の合う人もいれば、当然信条や思想的に相容れない人とも沢山いた。まともに対話する気も無く自分の気持ちをアジる人もいた。病んだとき親身になって話を聞いてくれる兄貴分もいた。そのすべての起点となったのは、やはり安心できる空間としての談話室だった。入寮初日に、談話室においてあった『ジョジョの奇妙な冒険』を読破したり、神ゲー『TRIALS FUSION』の攻略に精を出したり、たまに学問の話になればちょっと真面目ぶって軽口を交わしたり、色々やった。ああ、ボードゲームの『ドミニオン』も教えてもらったか。こいつは人生で出会ったボードゲーム中でも特別な位置にある。
あとは酒に対して真摯な人が多い空間でもあった。私が酒と正しく付き合うための素地を作ってくれたのは、当時の談話室の民たちに他ならない。ついでに、私自身カクテルの作り方をいくらか覚える契機にもなった。たまに飲み会で心を込めて酒を混ぜると人々が喜んでくれたので、勉学と並行してそれらのことを必死に覚えようとしたものだった。
そういう、取り留めのない小さな記憶、あぶくのように湧いては消える感傷の集合体が、私にとっての談話室であったと、今振り返った目線からは思う。
無論、談話室以外にも色々思い出はある。記憶に残っている事象は、入寮したての頃に経験したことが多い。地方から出てきて文化のごった煮に放り込まれたタイミングというのは、多分見るものすべてが新鮮だったからではないかと思う。
ロビーにはあまり入り浸らなかったが、何故か印象深い出来事が2つもある。
1つ目は麻雀の話だ。いつかの寮祭のとき、あそこに置いてあるツルツルの麻雀牌を使って打ったら東一局で国士無双を決められて大敗した記憶がある。そのときアガったヤツは少し後、遊びに来たOPを数え役満でフルボッコにしていた。ヤツは元気にしているだろうか。同釜会で会ったら確認しよう*2。
もう1つはカラオケの話だ。ロビーをうろついていたら、急に(さほど親密でもなかった他ブロックの)先輩にカラオケへ連れて行かれたこともあった。ちょうどそこらへんにいた元寮生のおっさんも巻き込んで、その先輩と私と、3人での突発カラオケは今でも記憶に残っている。おっさんは何を歌ってもフォークソング調になるので面白かった。先輩に低音を褒められたのも嬉しかった。今でも歌うことは好きだ。
Bar KUMAにもお世話になった。ジンを切らしていると聞いたはずが、酔ってすっかり忘れた挙げ句マティーニを頼んだ折は大変申し訳なかった。無理を押してコンビニにあったギムレーで作ってもらったあの味はすでにぼやけてしまったが、多分いつもより苦かった気がする。
こういう経験が何かの役に立つかはよく分からない。そもそも何か役に立たせようと思って経験したことでもないし、当たり前だ。ついでに、美化しすぎた記憶も幾らか混じっているに違いない。
だが、たとえば人生において何もかも捨てて放り出してしまいたくなったときに、自分を繋ぎ止める錨があるとしたらこれらの記憶なのではないかと思う。私が、荒波の社会の中に下ろす錨だ。
今後何があっても、私は後生この思い出達を大事にとっておくのだろう。救い、あるいは在りし日の幼さの象徴として。
寮の話はここまで。次の項目からはまた別の話をしよう。
今年やったゲームの話
人生に娯楽は多い方が良い。幼いころから変わらない私の信念である。
だが、飽き性なもので単一の娯楽を続けることはしてこなかった。なので一年を振り返ると、その年によって何に最も時間を費やしたかが変わってくることも多い。
それでいうと、今年はテレビゲームに時間を費やした年だったと思う*3。
なので、今年やった中でこれは! という作品について少し述べてみたいと思う。本当は3作品くらいガッツリ取り上げて書こうと思ったのだが、ライザのアトリエへのほとばしる感情を綴っていたら結構な量になってしまった。
迷った挙句、メインは『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』の話にすると決めた。それでも一回書いてみたら字数がすごいことになったので、ゲームの鍵となる錬金術システムの話と、ストーリーの話の2つに絞ろうと思う。
他にやったゲームで印象深い奴は後ろでまとめてちまちまお話する。ネタバレには極力配慮するが、一部伏字でどうしても書きたいことを書く場所は出るので、気になる方は気を付けてほしい。
『ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~』の話
どんなゲーム?
アトリエシリーズについては前述の通りなので説明は省く。
今作はアトリエシリーズの中でも、俗に『秘密シリーズ』と呼ばれる小シリーズ三部作の1作目である*4。ゲームそのものは2019年に発売されたが、先に述べた通りアニメ版が今年放送されていることでご存知の方もいらっしゃるだろう。主人公の太ももが異様にでけえことで知っている友人もいた。
ちなみに今年には、秘密シリーズの最終作である『ライザのアトリエ3 ~終わりの錬金術士と秘密の鍵~』が発売された。1から通してやると感慨深いものがあるのでこちらもおすすめ。というか1をやったら2も3もやってほしい。そして沼に
さて、この作品について話す前に、1つ私個人の話をさせて欲しい。
私は昔から、あまりRPGという種類のゲームを好んでプレイしていない*5。別に嫌いというわけではないのだが、何となくやる気にならない。
これは別にRPGというジャンルが悪いのではなく、ひとえに私自身の気性と偏見によるものだろうと思う。ちまちまレベリングする作業が苦手だという気性と、RPGとは得てしてそういうもんという偏見である。こういうのに雁字搦めにされると、RPGをやらなくなっていくわけだ。
ライザの面白かったところ①~錬金術システムの爽快感~
そんな私なので、レベリングが本質でないRPGがある、という事実は割と驚いた。
正確に言えばライザのアトリエにも戦闘レベル*6や錬金レベル*7は存在するが、「これらのレベルを上げるために魔物を狩るだけの時間」は私のプレイ中には無かった。ついでに、クリアまで一度たりと装備品を店で買うこともしなかった。
何故かといえば、倒せない敵がいた時のブレイクスルーとして「戦闘レベルの上昇」や「装備品の購入」以外の方法が提示されているからだ。どういうことか、以下で説明していこう。
そもそも、ライザのアトリエが属するアトリエシリーズは、初代マリーのアトリエからして「世界を救うのはもうやめた」とか言っちゃうレベルでRPG然としていない。戦闘よりも、ゲームの主題となっている「錬金術」のシステムに重点が置かれている。
この錬金術が中々面白い。基本的には探索ポイントで見つかる素材を拾ってきて、適切な組み合わせで釜に入れ調合すると新しいアイテムができるというシステムだ。各アイテムには固有のレシピが設定されており、そのレシピに対応する素材を探して調合するのである。
聞けば単純だが、あえて通常のレシピと関係ない素材を入れると未知のアイテムのレシピを発見できたり、素材ごとに設定されている「品質」というパラメータによって、同じ名前の素材を使ってもできるアイテムの品質が変わってきたりと、奥が深い。
特に、高い品質の素材で高い品質の攻撃アイテムを作ると、戦闘レベルに差がある敵も結構あっけなく倒すことができてしまう。この調整を大味と捉えることもできるが、当然強いアイテムを作るまでには手間暇がかかるわけで、錬金という過程に面白さを見出せる采配とも言えるだろう。
上記について、もう少し補足しよう。
一例として、(その場でとりうる最適戦略をとったにもかかわらず)ストーリー進行中に強敵とまみえてボコボコにされたとする。普通なら戦闘レベルを上げて再戦するか、装備を変えるかするだろう。しかし、このゲームでは「強敵を倒せるクソ強い爆弾を何とか知恵を絞って作る」という選択肢がある。
然る後、実際に知略を巡らせた後に、素材を拾ってきて、時には魔物から素材を回収して、調合して、実際に敵を消し飛ばせるダイナマイトが作れると脳汁がドバドバ出る。その「こだわりの一品」で、これまで倒せなかった敵を薙ぎ倒していくのはもっと気持ちいい。病みつきになる。
そんなわけで、RPG食わず嫌い人間だった僕にとって、このゲームはRPGというジャンルそのものへの見方をある種変えるようなものだった。まあ、これが「RPG的な面白さ」なのかは議論の余地があるとは思うものの、それでも、このゲームを起点に『秘密シリーズ』3作品や、『不思議シリーズ』4作品を一気買いして一気にプレイするだけの期待と衝動を貰えたのは間違いない。
ライザの面白かったところ②~ストーリーの王道さ~
また、ストーリーもとても良かった。
主人公ライザをはじめ、仲間のレント、タオ、クラウディアや、序盤ではいけ好かない立ち位置のボオス、ランバーの「子どもから大人への過渡期」描写が緻密だった(特にライザたちとボオスの対立は、その理由まで含めて若年期独特のほろ苦さを感じられる)。
また、舞台となるクーケン島はいわゆる「因習島」もいいところで、(色々要因はあるにせよ)古いしきたりに縛られ、よそ者を快く思わない大人たちが描かれるところも多い。
そんな大人たちとの対立や、ボオスたちの衝突、そしてライザの師匠となるアンペルとリラとの出会いと危機など、様々な課題を経て進んでいくライザたちの姿は見ていて応援したくなったし、それで成長していく姿は愛おしかった。
個人的にはやはり、ライザが初めて錬金術の産物を目にした時のシーンや、ボオスがとある場所でキロという女性に出会うシーンの前後(というかボオスが絡む「焦りの少年」編全体)辺りが印象に残る。
これらのシーンは、少年少女がそれまでの価値観を揺さぶられるという点で共通しているだろう。世界を見ていたフレームが歪んだことで感動したり、深く思い悩んだりしながら成長しようとするのは純粋で美しい。大人になるにつれそんなことは減っていくからこそ、その渦中にいる少年少女たちの姿は心を打つのではないだろうか。
後は「中盤でライザがアンペルの義手を作るシーン」(ネタバレにつき反転、以下の文章の白抜き部も同様)もとても良い。主人公の成長を示すシーンでもありながら、「アンペル」にとってもこれまでの自分が背負って来た色々を下ろすことができたシーンでもあり、ここまで順当にゲームを進めてきた&「イケオジが好きなのでアンペルさんを当然の如く好いていた」私はちょっとウルっときた。
王道ジュブナイルというヤツになるのかもしれないが、やはりこういう物語は普遍性を持って訴えかけてくる。直球ど真ん中ストレートをモロに食らうのは心地よい。
キャラ単体で言えば、クラウディアは個人的にとても気に入った。このゲームは、フィールドでの探索中に素材を採取することになるのだが、採取の度にキャラクターが何か発言をしてくれる。クラウディアの発言は割と外界をよく知らないお嬢様みたいなもの*8が多く、冒険を介して自分の中に新しい生きた知識を取り込もうとしている様をありありと感じられた。プレイしながら「クラウディアそのままずっと喋っててくれ……」と思っていたくらいには。
やった人は分かると思うが、これがライザ2に繋がっていると思うとちょっと涙出る。この時の経験絶対生きてるじゃん。
ストーリー全体としてはそんなに長いものではないのだが、密度は非常に濃かったと今でも思っている。というか、ライザ2と3をクリアした今だからこそもう一度通してやってみたい気持ちに駆られてきた。2と3は「既に大人になったライザたち」の話であり、これはこれで良いのだが、1作目からしか得られない栄養というものが確実にある。
書いてたら我慢できなくなってきた。私はこの記事を書き終わったら、引継ぎ二周目のデータをVERY HARDでクリアしに行こうと思う。
次回作などについての話
ライザ1はそういうわけでとても面白いゲームだった。なので、当然の如くライザ2と3も買った。ちょうど今年の夏ぐらいのことで、台風が過ぎたくらいに一度寮へ遊びに行ったのだが、その直前にライザ3を遊び終えた。
ストーリーは当然繋がりが強く、1や2の登場人物のその後が3で語られているのは趣深い。ところでクリフォードさんとセリさんの後日談はどこ……?
3の頃にはすっかりライザも錬金術士*9として、そして一人の大人として成長し、降りかかる超難題を打ち払う存在になっていく。ついでに、1の頃のライザたちと同じ年代の少年少女たちを導くよき先達ともなっている。
これはライザ1からじっくりストーリーを読みながらやって良かったなと思ったポイントである。主人公たちの少年期の終わりとして次代への継承があると、おじさんはそれだけで嬉しくなってしまうんだな……。
後は当然、戦闘や調合のシステムも作品が進むにつれて進化していく。個人的には調合システムは2が好きだ。3はRTAなどでも知られる通り*10、やろうと思えば超序盤からスキルツリーを爆速で開けることができる。これは3特有のシステムが原因だ*11。
2はその点、若干強い素材を作る際に不便を強いられる*12のだが、それが私にはかえってちょうどいい刺激になったらしい。なので、『秘密シリーズ』3作品の中で一番気持ち良かったのは2だ、と主張しておく。
戦闘システムに関しては、順当に時代が進むにつれて進化したような気がする。
ターン制ではなく、所謂アクティブタイムバトルであるのは秘密シリーズを通して変わらないところであるが、好き嫌いは分かれるのかもしれない。個人的にはどっちでも良い人なので別に気にしなかったが。
特に3の「鍵」システムは面白かった。一時的な超強化をどう使うかの戦略や、また使った後のガンガン殴れる時間の爽快感はやってて楽しかった。でもDLCのロスカ島にいたアレは好かん。
とはいえ、個人的には「作る面白さ」のゲームだったと思っているので、戦闘がどうだったとかについてはあまり気にしてない節がある。強いて言うなら、ちゃんと丹精込めて作ったアイテムの意味が確認できる戦闘だったということは、きっといいバランスなんだろうと思う。
最後に
これにてライザのアトリエの紹介はお終いである。
RPGを好かない人は世に一定数いると思うが、そういう諸氏の中にも錬金術システムに惹かれる人はいうるだろう。もし、この記事を読んで手に取る人がいてくれたら幸いである*13。
この記事を書いているのは冬だが、錬金術と王道成長譚が合わさった眩しい一夏の冒険を是非味わっていただきたい。
それ以外のゲームの話
無論、これ以外にも今年は沢山ゲームを遊んだ*14。
中でも以下では、『超探偵事件簿 レインコード』、『パラノマサイト FILE 23 本所七不思議』、『リディー&スールのアトリエ DX』、『ウーマンコミュニケーション』、『十三機兵防衛圏』、『Buddy Collection Extra』、『ホグワーツ・レガシー』の簡単な感想を記載している。
ネタバレに触れている部分もあるため、これからやろうと思っているゲームがある方は、感想なんか読む前にさっさと買ってプレイするのが吉だろう。
『超探偵事件簿 レインコード』
ダンガンロンパの制作陣の作品ということもあり、数年前の告知当時からずっと心待ちにしていた。今年の6月、まさに梅雨のシーズンに発売され、睡眠時間を削ってやったこのゲームについてはそれなりに思い出深い。
やはり3Dで犯行現場を直接捜査し、謎迷宮という視覚表現の暴力の中で謎を考えるのはある種の爽快感があった。ロードが長いのは気になった(が、それもアプデで改善されたという。素晴らしい)。
ただ、何というかアクションに振りすぎたのか謎解きの難易度自体は低かった。学級裁判と違って当事者の新証言が出てこなかったり、証拠がほとんど増えない*15都合上、最初からほぼ全ての手がかりが露骨に開示されているのもそれに拍車を掛けている。骨太、歯ごたえ抜群な謎解きを期待している人には肩透かしかもしれない(というか自分もちょっと肩透かしを食らったと思っている)。
まあそれを差し引いても、アクション部分や全体ストーリーはおもろかった(特に4章)し、最後には「ダンガンロンパシリーズのファンだからこそ衝撃を受ける」演出もありかなりシビれた。気になっているなら購入してみて欲しいゲームだ。
なんと、記事公開直前になってサントラ発売の報を聞いた。
今作は舞台となるカナイ区の鬱屈とした感じを反映したBGMが魅力的だったため、いつサントラを出してくれるのか待っていただが、ようやっと決まったらしい。超推理フィナーレのBGM、クライマックス推理のBGMを踏襲しつつもよりシックな感じになってて最高だったんだよな……。
『パラノマサイト FILE 23 本所七不思議』
ニンダイで宣伝されていた時から気になっていたので、発売日を1日溶かしてクリアした。
喧伝されている呪殺バトルという点は個人的にはまあまあ、という感じ。それよりも、「この手のギミック」を導入している中で、陳腐化させずに「このギミックを入れる意味」まで説得力があったのは素敵だった。
後で別のゲームの感想にも書いたが、「入れればなんかウケそうに見える」というのがこのタイプのギミックだと思っているので、入れるなら入れる意味をきっちり説明して欲しいというのが僕の感情なのである。
その意味をきっちり説明しきり、最後の大事な部分の謎解きはプレイヤー自身の頭で考えさせ、行動させる(そしてそれに納得感がある!)のは稀有だと思う。「緻密に貼った導線から取るべき行動を推測させること」を、フェアな「プレイヤーへの挑戦状」として受け取れたのは嬉しかった。
序盤からばら撒き続けた伏線の回収もお見事。多分この1年で最も話題になったゲームの1つだろうし、私がアツく語るまでもなく多くの人が手に取っていることと思う。それはこのゲームが「この手のゲームでできることは何か」という哲学を持って作られていた証だと私は考える。
『リディー&スールのアトリエ DX』
ライザのくだりでも言ったが、アトリエシリーズは『秘密シリーズ』全作と『不思議シリーズ』の途中までをプレイした。今はソフィーのアトリエ2をやっている。プラフタが可愛い。年末までにはクリアしたい……。(12/05追記)クリアした。エンディング前のシーンで心がいっぱいになり、自然と涙があふれだしてきた……。ゲームやってて泣いたのとか何年ぶりだろう。本当に良いゲームだった。
『不思議シリーズ』は『秘密シリーズ』よりも、調合がパズルチックになっていて、個人的にはこっちのほうが合う。特にリディー&スールのアトリエは面白かった。「触媒」が非常に戦略的? になっていて、限られた材料で頭をひねりながら調合する楽しさを体験できた。勿論、強力なアイテムを錬金できた時の喜びは変わらない。
戦闘についてはファルギオルは強くて苦戦を強いられたが、アトリエ特有のアイテム全振り戦法でギリギリ突破できたのも割とスリルあって痛快だった。
ストーリーもこれまたメインは成長譚という感じで、個人的には割と好き。
何より、レベリングが嫌いと言っておきながらトゥルーのためにレベリングをやる*16気になる程度には気持ちを掻き立てられた。それで見たトゥルーは、まあ本当に絶対賛否分かれる内容だろうが、この双子ならそうするだろうしその決断は尊重したいな……と思えた(ただ、劇中には「錬金術を使って半永久の生を有限の生へと、あるべき姿へ戻す」というシーンがあったにもかかわらず、「双子がやったのはそれと真逆のことで、錬金術でエゴを叶えちゃってないか?」とも思えてしまうのもまた事実)。この手の話題が難しいだけでなく、劇中描写との兼ね合いで余計悩んでしまうので余計難しい。まあ、プレイヤーの数だけ答えがあるよね、で誤魔化しておこう。
キャラクターで言えば子安武人氏演じる双子の父・ロジェには笑わされたし、泣かされたし……情緒をぐちゃぐちゃにされた。テラ子安。最高。そういえばレインコードのヤコウ所長も子安さんだったな。テラ子安。
あとはスーちゃんが銃を使っているのを見た時は「え゛っ! 銃!!!!!!!」と叫んでいた。諸君らは年端もいかない少女が二丁拳銃を使って敵を薙ぎ倒すのにロマンを感じないだろうか? そうだよな、感じてくれるよな。リディーとの仲の良さも見ていてほっこりする。何か救われたような気持ちになった。
三部作の最終作*17ということで、中々「このゲームから始めたらいいよ」とは言えないが、時間と興味があるなら是非ソフィーのアトリエ1から順に手に取ってみて欲しい(勿論、ストーリーにあまり頓着が無いなら、このゲームから始めても充分楽しめるはずだ)。
『ウーマンコミュニケーション』
初めのうちは「バカのダンガンロンパ」とか揶揄してたが、単なる一発ネタではなく、「この類のゲーム*18」に対してリスペクトを感じられる作りになっているのが分かってとても嬉しかった。劇中でのプレイヤーに対するヒントの出し方も白眉だったように思う。
ネタバレを極力避けて書くと、「この類のゲーム」に使われるギミックは「それをやっておけばウケる気がする」という、ある種の陳腐なギミックと化す危険性があるのだが、そこで一歩立ち止まり、「どうしてこのギミックを入れる必然性があるのか」まで斬り込んでいるように感じたのである。
このゲームを終えた後、私は前年発売のとあるゲーム*19を思い出していた。両作品とも「ゲーム内のキャラクターによる直接の要請ではなく、プレイヤーが自分の意思で介入することを選ぶように、ゲーム内のキャラクターが誘導を行う。結果、プレイヤーは明らかに"自分で選択をする"にもかかわらず、それが最終的にはゲーム内のキャラクターの思惑と一致する」(重大なネタバレ)という方向性だが、アプローチが違う。そういう意味でも味わい深い。
「単なる男子中学生が喜びそうなゲーム」だと捉えている人には、それは違うねと言わせてもらおう。その上で題材は題材なので人は選ぶが。
『十三機兵防衛圏』
他だと(発売は今年じゃないが)『十三機兵防衛圏』は面白かった。
ストーリーがプレイ中ずっとあまりにもめちゃくちゃな構造をしているようにしか見えないのだが、すべてが終わって俯瞰的に見た時、自分の中のねじれが一気にほどける感覚があってスッキリした。どっかの記事で「多層的な構造」という表現が使われていたが、まさにそうだ。視点をかなり多数に分け、しかも必ずしも同じ出来事を描いているわけでもない、時系列も当然めちゃくちゃ……それでいて最後に「何があったのかプレイヤーもちゃんと理解できる」作りは怖すぎてうすら寒さすら覚えるレベルだった。
これで大きな矛盾なく完成してるの、凄すぎないか? 奇跡すぎないか?
個人的には冬坂五百里や網口愁など、「同じだが違う」存在は結構刺さった。あと東雲先輩すき。怖いし絶対に近寄りたくないけど……。
タワーディフェンスとしての出来が良いのかは分からない。普段やらないのでこれが良いのか悪いのかとんと見当が付かないためだ。正直、タワーディフェンスがついてくるめっちゃストーリー設計が凝ったノベルゲームだと思っているので……。
『Buddy Collection Extra』
(これも今年発売じゃなかった気がするが)『Buddy Collection Extra』は良かった。乙女ゲーをやることはほぼないが、当時はSwitchで遊べる推理モノに異様に飢えており、目につくものは結構手を出していたのだが、その中の1つがこれだった。後からやった本編シリーズ*20より、推理モノとして完成度が高かったExtraの方が好み。
乙女ゲーとしての評価は知らん。詳しい人に聞いてくれ。
システムとしては主人公の相棒となるキャラクターをスタート時に選び、そのキャラと旅先で事件解決に挑むことになる。旅先で遭遇する事件は、相棒に選んだキャラによって被害者と犯人、及び犯行方法が全く変わる。しかし事件全体の関係者は変わらない。あるキャラの事件では被害者だった人物が、別のキャラの事件では犯人になっていることもあるのだ。そうして関係者たちの色んな側面を、別々の事件を通して垣間見つつ、最終的に事件の真相に至ることになる。
その過程やシステム、真相そのものもさることながら、やはり人物の見せ方の面が個人的には面白かったように思う。各ルートが終わった時のサスペンス感、先が知りたいと思う渇望も程よく引き出されて、その日の睡眠時間が消し飛ぶほどには熱中してプレイした。
本編シリーズの知識はなくても楽しめたから、推理モノとして気になるのであればちょっと手を出してみて欲しい。値段相応の価値はある。
『ホグワーツ・レガシー』
最も直近でプレイしていたゲームだ。
私がこのゲームを買ったのはひとえに「許されざる呪文が使い放題らしいぞ!」という一点からであり、それに最高の形で応えてくれた。クルーシオの熟達からのアバダ・ケダブラの熟達で敵を大虐殺する闇の魔法使いプレイまで許されるとは、なんと懐の深いことか。誇り高きレイブンクロー生として、叡智に任せ暴虐の限りを尽くせた。
お陰で、今年一番倫理の枷を外してゲームを楽しめたように思う。世界観の中でも違法で邪悪とされる術を嬉々として学び行使する、というのは現実では絶対にできないしやってはいけないわけだから、ある意味で最もゲームに求めている体験をさせてもらったのかもしれない。次はグラセフでもやろうか。
ちょっと微妙だったのはレベリングが異様にきつかった(これは私のプレイスタイルがせかせかとメインストーリーを進めるものであるのも悪いが)ことと、Switchなのでロードが所々長かったことか。特にこだわりが無いならPS4とかPS5の方がロード早いんじゃないかな? それを差し引いても無法者プレイがあまりに面白かったので殆ど気にしていないのだが。
ヴォルデモートやグリンデルバルド*21に負けない外道になるもよし、清く正しいホグワーツの優等生であるもよし、だ。
結
このまま書くと字数が限りなく大きな自然数になりそうなので、まだ13000字強でとどまっているここまでで終わりにしておこう。
最後に、執筆に使用したプレイリストを貼り付けておしまいにしたい。
ここまでお付き合いいただいてありがとう。また来年もこの企画があればお会いしよう。
執筆に使用したプレイリスト
普段はサントラ買ってオフラインでプレイリスト作ってるのに、公開の手間を考えたらSpotify使った方が楽じゃね? と思って急遽作ったもの。文明の利器ってすごい。不慣れなものでこれで上手く使えるのか分からないが、使いづらくても許して欲しい。
ちなみに、再生時間を合計するとほとんど1時間になるので、プレイリストが1周することで時間の経過を体感することができる。ほぼ1時間計として利用するのもアリだろう(アリなのか?)。
*1:一部アドベンチャーゲームの作品もあるが
*2:12/04追記:会ってきた。修論が大変と言っていた他には元気にしている様子でホッとした
*3:といっても、読書やインターネットや音楽やアナログゲームとの間を行き来しながら、その中でもテレビゲームが多かったという意味である。けして、テレビゲームだけに熱を上げて1年をそれにささげたわけではない
*4:大抵、副題に共通して使われているワードでこの括りが成立している。ライザ1,2,3は副題に「秘密の隠れ家」「秘密の妖精」「秘密の鍵」というワードが含まれているので『秘密シリーズ』だ。
*5:なので、RPGに関する知識・経験は少ない。これから語る内容も大きく偏見が混じるので、違うだろと思ったら違うだろと心の中で思っておいて欲しい
*6:キャラクターの戦闘についてのレベル。一般的なRPGにおけるキャラクターのレベルが戦闘レベルだと思ってもらえればよい
*7:主人公の錬金術に対する練度を表すレベル。一定値以上になると調合時に入れられるものの数が増えたり、作れるアイテムが増えたりする
*8:12/08追記:こう書くと誤解を受けそうなので一応書いておくが、クラウディアは設定上隊商で旅してるので外の世界を知ってはいる。冒険という形で自然や魔物等に触れるのが初めてということである
*9:アトリエシリーズでは何故か「錬金術師」ではなく「錬金術士」という表記が正式らしい。何気なく打っていると間違えることが多いのでちょっと気を遣う。
*10:気になる方はRTA in Japanのチャンネルに上がっている「Stylish Speedrun Showcase V」の時の動画を見てみて欲しい。予備知識が無くてもなんかヤバいことしてるのが分かると思う
*11:2もDLCで「アナザープラネット」というアイテムを導入すると同じことが起こるのだが、まあDLCだし良いか……という気持ち
*12:上位素材を一発で作ると逆に弱くなる、など
*13:実は11/29までSteamオータムセールをやっていたのだが……まあ、すぐにウィンターセールがあるだろうし、そこで買われると良い
*14:戯れに数えてみたらこの1年で遊んだゲームは28本だった。あれ、少なくね……? 「スプラトゥーン3」が無限に時間を奪ってくるせいかもしれない
*15:一応現場再現みたいなパートがある章もある
*16:リディー&スールは、トゥルーエンド条件に錬金レベルだけでなく戦闘レベルの一定値到達も含まれる。当該レベルに到達した時のイベントで放たれるリディーの迷言は必見
*17:ソフィー2含め四部作として見た時でも時系列的には最後に位置する作品
*18:エッチな題材のゲームという意味ではない
*19:具体名を出すと、それだけで当該ゲームそのものの楽しみを奪ってしまうので伏せる。分かる人には分かるだろうが、2019年発売のとあるノベルゲームの続編である
*20:ifのこと
*21:作中時系列だと2人ともまだ生まれてないけど